2024年5月FP1級学科試験 基礎編講評

fp1級コース 2024年05月31日

FPキャンプ講師のとやまです。

5月26日に実施されたFP1級学科試験を受験された皆様、大変お疲れ様でした。

本記事では、5月試験 基礎編の総評と各分野の講評、ならびに全体の振り返りと攻略についてお伝えします。

基礎編総評

過去2回の試験と比較して基礎編全体を振り返ると、難化したという印象を受けました。難化の傾向も、テキストや過去問の知識が深く問われるのではなく、受検生が知らないような論点や失点させることを意図したかのような出題も増えています。

一方で、2級レベルの問題も出題されています。2級レベルの問題は「適切なものはいくつあるか」という質問で出題される傾向にあります。FPキャンプの一問一答問題集で選択肢一つひとつとじっくり向き合ってきた受検生は、自信をもってこれらの問題に解答できたかと思います。合格のためには、基礎的な論点の問題を確実に得点源にすることが重要だったといえます。

各分野の講評

A分野(年金・社会保険)

難易度:
(問1-8)における目標得点:16点中6点

基礎編の出題傾向として、全分野を通じてA分野が最難関であり、初見の問題も多く出題されています。今回試験においても同様で、問2・4・7はテキストにも載っていない論点であり、全く太刀打ちができなかった受検生も数多くいらしたのではないでしょうか。

また、確実に得点できる問題も少なかったです。問6・8の正解択は過去に出題されていますが、それ以外の選択肢を不正解だと明確に回答することは難しかったと思います。問1の「6つの係数」の計算は、係数の意味まで理解している受検生は迷うことなく解答できますが、過去問の計算式を暗記しているだけの受検生は応用力が足りずに答えを導くことは難しかったと思います。

過去に出題されている論点について、自信をもって解答する力がなければ、この分野での得点は難しくなっています。初見の問題に惑わされずに、試験日までに積み重ねてきた知識を信じることができたかが、A分野攻略のカギとなりました。

B分野(リスク管理)

難易度:
(問9-15)における目標得点:14点中10点

B分野では過去問の知識を用いることで解答できる問題が多く出題されました。問9・11・12・14は、4択とも全て見覚えのある選択肢であり、合格するためにはぜひとも正解したかった問題です。

問13・15においても1級学科試験の標準的な難易度の問題です。冷静に問題文を読むことで、選択肢を絞り込み、正解に近づくことができたでしょう。

B分野は過去試験においても、得点源になりやすい分野です。出題範囲は狭く、出題形式も類似のものが多くあるため、一つひとつの論点をしっかりと理解しながら学習を進めていたかが、今回の正答率を左右する結果となったことでしょう。

C分野(金融資産運用)

難易度:
(問16-24)における目標得点:18点中8点

今回のC分野の問題は難しい問題と易しい問題の差が顕著であったといえます。問16・19・23のように必ず得点源にしたい問題もあれば、問18・21のように選択肢を絞り込むことすら困難な問題もありました。

問22は先物の反対売買によるリスクヘッジについて、計算問題が出題されました。今まで出題されたことがない形式でしたが、売建てとは何かを冷静に考えながら問題を解いていけば、得点できる問題であったといえます。

初見の論点の問題は気にせずに、しっかり考えるべき問題に時間を使うことがC分野の攻略に必要だったといえます。自信をもって解答できる問題は少なかったと思いますが、時間を有効に使って冷静に問題を読み込めば、得点を伸ばすことができたでしょう。

D分野(タックスプランニング)

難易度:やや易
(問25-33)における目標得点:18点中12点

今回試験において、FPキャンプ一問一答問題集でのカバー率が最も高かったのがD分野です。問題集を繰り返し解いていた受検生であれば、問25・26・28・29・33の解答の選択肢は、最短で導き出せたのではないでしょうか。

問32はインボイス制度が出題されました。一見すると難問であると感じるかもしれませんが、免税事業者はインボイスが交付されないという根本的な論点が理解できていれば、正解を導くことができます。

問31の圧縮限度額を求める計算問題は、出題論点として初見であり難問でした。しかしそれ以外の問題は過去に出題されたことのある論点です。「過去問は絶対に間違えない」ように準備していた受検生にとっては、易しい分野であったといえます。

E分野(不動産)

難易度:普通
(問34-41)における目標得点:16点中10点

問39では、固定資産交換の特例が出題されました。直近の試験では出題が無かったため、そろそろ出題されそうな気配があると睨んでいた論点です。そのため、FPキャンプが制作協力した対策模擬試験には固定資産交換の特例の問題を多く取り入れました。模試を通して試験対策をしていた受検生は、正解できたと思います。

問36は宅建試験レベルの問題であり、開発許可について詳しく問われています。しかし、開発行為とは建築物を建築するための土地の区画形質の変更である点や、市街化区域には農業用の建築物を建築しにくいことを想起することができれば得点できます。今まで持っている知識から発想を想起させることができるかが合否を分けるポイントになります。

全体でみると、標準的なFP1級学科試験の難易度でした。過去問ベースの知識では選択肢を絞り込むことが難しいものもありますが、知識を想起させて出題の意図を汲み取ることができれば、得点できる問題もあります。合格するためには、試験本番に持っている知識を応用させる発想力が求められることが試された試験でした。

F分野(相続・事業承継)

難易度:やや難
(問42-50)における目標得点:18点中10点

F分野は作問者の意図が分かりにくい問題が多く出題されていた印象を受けます。問42の民法の認知や問46の相続税の納税義務者の語句選択、問48の社団医療法人の評価など、FPにとって本当に必要な知識なのか疑わしいものが出題されています。これらは配点調整のために出題されたと思って構いませんので、失点しても気にしないでください。

しかし、上記以外は王道的な問題だったといえます。問44の相続の承認の論点や、問45の配偶者居住権の論点は、2級レベルの知識でも解答可能でした。1級学科試験は難化傾向にありますが、過去問を分析してみると難易度が低い問題も出題されていることがわかります。こうした問題は極力失点しないよう基礎知識の徹底を疎かにしないようにしましょう。

基礎編の振り返りと攻略に向けて

今回の基礎編において、FPキャンプの一問一答問題集をベースとして学習を重ねた受検生であれば、56点は得点できたのではないでしょうか。今回の応用編は過去回と比べて易しかったといえるため、基礎編は最低50点は得点したいところです。また正答を導くことができなくとも、選択肢を絞り込むことはできるため、期待値として60点台を狙いたい試験であったと思います。

FPキャンプの一問一答問題集と完全講義Premiumの視聴で、計算問題を除いた200択のうち、53%は適切か不適切かを判断することができました。FPキャンプで基礎編の土台ができている受検生であれば、約半数の問題は迷うことなく正誤を導き、残りの問題に時間を割きながら、ゆっくりと問題を読解できたといえるでしょう。

総じて、今回の基礎編は全く歯が立たない初見問題が多く出題された印象を受けます。特にA分野とC分野において、この傾向が強かったです。試験中にはこうした初見問題に遭遇しても、挫折せずに次の問題に切り替えて挑戦するメンタルが必要となります。

また、どこかで聞いたことのあるような問題や、深く考えれば解答を導くことができる問題も基礎編には存在します。日頃の学習時から、制度の目的や導入背景を考えていると、こうした問題の正答率がグッと上昇します。

今回の試験は、応用編が得点源となったため、基礎編50点でも合格点の6割に到達することが可能です。しかし、直近の出題傾向をみると、応用編で得点を稼ぐことが難しい場合も多くあります。今回のような難易度であっても、基礎編で60点とれるように日頃から準備しておくことで、どんな難易度の試験が出題されたとしても合格できるようになるでしょう。 

【1級応用編の講評はこちら】 

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この記事を監修した人 

僧侶FPとやま

1級ファイナンシャル・プランニング技能士/宅地建物取引士
FPキャンプ1級コースの基礎編対策の問題集や解説、一問一答のメルマガを担当。本業である僧侶としての深い見識から、わかりやすくタメになる情報を発信