2024年1月実施FP1級学科試験 応用編講評
2024年02月07日2024年1月に実施されたFP1級学科試験を受験された皆様お疲れ様でした。
このページでは今回試験応用編の講評を行います。
応用編講評
計算問題では、年金・社会保険分野で障害年金について出題されたため、失点してしまった方も多かったと思います。しかし、それ以外の分野での計算はオーソドックスな問題だったため、得点することはできたはずです。
一方穴埋め問題は、問題によって難易度のバラツキが大きかったと思います。得点調整のために出題したと考えられる初見の穴埋め問題は読み飛ばし、穴埋めの過去問で問われた論点や、基礎編で出題実績のある問題での失点を最小限に抑える必要がありました。
配点予想
問題番号 | 解答 | 配点 | 小計 | |
第1問
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問51 | ① 労働保険事務組合 ② 都道府県労働局長 ③ 4(日)④ 60(%) ⑤ 傷病補償(年金) ⑥ 7(級) | 各1点 | 6 |
問52 | ① 3(級) ② 1年6カ月 ③ 1(年間) ④ 65(歳)⑤ 5(年) | 各1点 | 5 | |
問53 | ① 1,451,150(円)② 1,050,850(円)③ 3,198,860(円)(計算過程あり) | 各3点 | 9 | |
第2問
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問54 | ① 8(回) ② 6(営業日) ③ 財務(大臣) ④ 逆イールド⑤ フラット(化) ⑥ ロールダウン(効果) | 各1点 | 6 |
問55 | ① 経常利益 ② 営業(利益) ③ 13.82(%) ④ 0.58(回)⑤ 1.35(倍) | ①②各1点③~⑤各2点 | 8 | |
問56 | ① 6.16(%)②-0.92(計算過程あり) | 各3点 | 6 | |
第3問
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問57 | ① 9,840,000(円) ② 900,000(円) ③ 11,000,000(円)④ 3,000,000(円) ⑤ 12,000,000(円) ⑥ 40,840(円)⑦ 47,000,000(円) | ①~⑥各1点⑦2点 | 8 |
問58 | 10,087,100(円)(計算過程あり) | 6点 | 6 | |
問59 | ① 30(%) ② 3(%) ③ 20(%) ④ 50(%)⑤ 役員 ⑥ 特定同族(会社) | 各1点 | 6 | |
第4問
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問60 | ① 1,717,800(円)② 28,400(円)(計算過程あり) | 各4点 | 8 |
問61 | ① 123(㎡) ② 300(㎡) | 各3点 | 6 | |
問62 | ① 10(年間) ② 20(年) ③ 2,000(万円) ④ 3(週間)⑤ 5分の1 ⑥ 45(㎡) | 各1点 | 6 | |
第5問
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問63 | 1,866(円)(計算過程あり) | 5点 | 5 |
問64 | ① 2,643(円) ② 1,943(円) | ①5点②3点 | 8 | |
問65 | ① 3分の2(以上) ② 配当(所得) ③ 1(年) ④ 3(年)⑤ 50(%) ⑥ 3(人) ⑦ 100(%) | 各1点 | 7 |
※公式では非公表のため、予想となります。計算過程がある問題においては部分点が付与される可能性もあります。
各大問の講評
各問の目標得点は配点予想を元に設定しております。
第1問(年金・社会保険)
(問51-53)における目標得点:20点中15点
≪問51≫
①②の労災保険の特別加入については、社労士試験の出題範囲となります。FP試験で問われたとしても解ける人は少なく、失点もやむを得ないでしょう。
③④⑤⑥は、過去の応用編の穴埋めでも問われている内容です。FPキャンプの穴埋め一問一答ドリルを勉強した受験生であれば、自信をもって解答できたと思います。
目標得点:6点中4点
≪問52≫
①②③④⑤の障害厚生年金の説明は、過去問でも問われた形での出題であったため、得点しやすかったはずです。④の障害認定日については応用編での出題はありませんでしたが、2023年1月の基礎編で出題があります。基礎編のFPキャンプ一問一答の内容が身についていれば、問題なく解答できたはずです。
目標得点:5点中5点
≪問53≫
問53では障害年金について、初めて出題されました。見慣れない問題で動揺された方も多いかと思いますが、過去問の知識を応用する発想力があれば解答できたかと思います。
①の障害基礎年金は、「子(配偶者は含まない)の加算額」「障害等級1級は基礎年金の満額の1.25倍」となる点を押さえていれば解答できます。
②の障害厚生年金は、被保険者期間が300月未満の場合300月とみなして計算することがポイントとなります。
③の傷害補償年金については初見で解答することは難しかったと思います。
目標得点:9点中6点
第2問(金融資産運用)
(問54-56)における目標得点:20点中18点
≪問54≫
①②③は金融政策決定会合の説明です。応用編での出題は今までありませんが、基礎編において出題されています。①は基礎編のFOMCが年8回、約6週間毎に開催されているという知識から発想を飛ばすことができれば解答できます。②は基礎編での出題もないため、得点は難しかったと思います。
④⑤⑥はイールドカーブの基本的な問題です。完全講義において詳しく説明がされています。応用編で問われることは初めてですが、完全講義を繰り返し見ている受験生であれば、他の受験生と差をつけられたと思います。
目標得点:6点中5点
≪問55≫
①の総資産利益率について、決算短信では分子に経常利益を使用します。利益の種類は多々あり、間違えやすい問題であったと言えます。
③④⑤の財務諸表の指標問題は、自己資本利益率、総資本回転率、財務レバレッジと最頻出の指標から出題されたため、得点しやすい問題でした。
目標得点:8点中7点
≪問56≫
①の標準偏差を求める問題は今までも多く出題されていますが、今回のような出題方法は珍しいです。ただ、この形式での出題は2016年1月の基礎編においてもされています。標準偏差の意味を明確に理解できていないと、失点してしまった方もいるのではないでしょうか。
②の相関係数は標準偏差が正しく求められていないと正答を導くことができません。しかし標準偏差が求まらなくても、部分点狙いでしっかりと計算式を残しておくことが重要です。
目標得点:6点中6点
第3問(タックスプランニング)
(問57-59)における目標得点:20点中17点
≪問57≫
法人の所得金額を計算する問題です。①②③⑥は過去問でも、ほとんどの場合に出題されているので、解けたのではないでしょうか。
④⑤の修繕費と修繕引当金は初見の問題になります。複式簿記の流れが理解できている方なら「資本的支出に当たる」という意味が損金不算入であたることがわかったと思います。また修繕引当金戻入は収益ではありませんので、全額益金不算入になります。落ち着いて考えれば得点できる問題ですが、一問間違えると総崩れになってしまいます。まずは問題文をしっかりと読み、お金の流れが資産であるか、収入であるかを判断する必要がありました。
目標得点:8点中8点
≪問58≫
法人税額の計算問題です。問57を正答できていないと、こちらの解答もズレが生まれてしまいます。法人税額の計算自体は、難しいことを問われていないので、計算式をしっかりと書きながら解くようにしましょう。
目標得点:6点中6点
≪問59≫
①②③のDX投資促進税制は、近年良く出題される税額控除の問題です。①③は基礎編でも同じ論点が出題されているので、複雑な制度ですが、全体像を把握している必要があったと言えるでしょう。
④⑤⑥の同族会社の問題は基礎編応用編ともに出題されたことはありません。しかしF分野で同族会社について頻出している論点でもあります。網羅的に理解できている人であれば、自己株式の評価にもかかわる論点である④は得点したいところです。
目標得点:6点中3点
第4問(不動産)
(問60-62)における目標得点:20点中16点
≪問60≫
①②の「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」と「3,000万円の特別控除」の組合せは不動産の譲渡の特例のなかでも最頻出の問題です。2021年9月試験においても同様の組合せで出題されています。譲渡資産の取得費についても概算取得費を利用する必要もなく、与えられた数字を用いるだけで税額を導くことができました。
目標得点:8点中8点
≪問61≫
建蔽率と容積率の問題はほぼ毎回出題される問題です。建蔽率について、防火規制は厳しい方の規定が適用されるということを忘れてしまいがちです。しっかりと与えられた条件を確認していないと、失点してしまう可能性があるので注意が必要です。
目標得点:6点中6点
≪問62≫
①②③④の住宅の品質確保の推進等に関する法律から出題されました。①②については2017年9月の基礎編に出題されていますが、応用編に関しては初見の問題になります。基礎編においての出題も10回以上前の試験であるため、得点は難しかったと思います。③④については宅建レベルの問題になり、FP試験の論点からは外れていたと言えます。
⑤⑥の容積率の延べ面積の算定について、⑤は確実に得点したいところです。⑥については、数学の問題です。受験時に冷静に対処できた人であれば得点できたでしょう。
目標得点:6点中2点
第5問(相続・事業承継)
(問63-65)における目標得点:20点中20点
≪問63≫
1年ぶりに「自社株評価」の問題が出題されました。直近の出題では、類似業種比準方式について業種目についても加味した上で計算する必要がありましたが、今回の出題に関しては業種目の指定もなく、解答しやすかったと思います。
目標得点:5点中5点
≪問64≫
純資産価額方式と併用方式からの出題です。この問題もひっかけるような要素もなく、過去問通り素直に計算をすれば、確実に得点できた問題です。
目標得点:8点中8点
≪問65≫
①②③の「自社株式の買取り」はFPキャンプの穴埋め一問一答ドリルにおいても対応している問題です。応用編の過去問でも頻出であるため、得点すべき問題でした。
④⑤⑥⑦の「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」は基礎編、応用編共に頻出の問題です。出題方式も、王道的であったため、得点を稼ぐチャンスであったと思います。
目標得点:7点中7点
応用編の振り返りと攻略に向けて
今回の応用編において、過去問をベースとした学習を重ねた場合に獲得可能な得点は86点でした。障害年金の計算を落としてしまったとしても、70点台が取れる内容であったと思います。
近年の応用編攻略のカギは、基礎編と応用編の横断的な学習にあります。標準偏差の計算は、過去に基礎編において同じ形式で出題されたことがあります。また障害年金の問題も基礎編の知識を用いることで、正答することは可能です。基礎編を学習する際に、何となく適切な選択肢を探すのではなく、論点を言語化できるようにしましょう。この能力を養うことで、応用編の見慣れない形式での計算問題や、穴埋め問題にも対応できるようになるはずです。
今回の応用編は、第4問・第5問など、明確に得点源となる分野もありました。近年の応用編は難化傾向がありますが、基本的な計算問題をしっかりと得点し、70点台を目指しましょう。
この記事を監修した人
僧侶FPとやま
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/宅地建物取引士。
FPキャンプ1級コースの基礎編対策の問題集や解説、一問一答のメルマガを担当。本業である僧侶としての深い見識から、わかりやすくタメになる情報を発信。