2024年9月FP1級学科試験 応用編講評

fp1級コース 2024年09月12日

FPキャンプ講師のとやまです。

9月8日に実施されたFP1級学科試験を受験された皆様、大変お疲れ様でした。

本記事では、9月試験 応用編の総評と各大問の講評、ならびに全体の振り返りと攻略についてお伝えします。

応用編総評

計算問題では、年金・社会保険分野で65歳以上の者の遺族厚生年金額の計算について出題されたため、失点してしまった方も多かったと思います。しかし、それ以外の計算は比較的易しい問題だったため、得点できた受検生も多かったのではないでしょうか。

また、穴埋め問題において、高難易度の出題が少なく、学習を重ねていた受検生であれば着実に得点を伸ばすことができました。近年の穴埋め問題は難易度が高い問題が多く出題される傾向にありますが、今回試験は過去試験の基礎編の論点からの出題が多かったため、冷静に考えることで解答を導くことができたと思います。

解答・配点予想・目標点数

問題番号 解答 予想配点 小計 目標点数
第1問
問51 ① 3(割) ② 65(歳) ③入院時生活(療養費)④ 患者申出(療養) ⑤ 200(床) ⑥ 5(万円) 各1点 6 3
問52 ① 30(日) ② 6(ヵ月間) ③60(日)④ 3 ⑤ 3(割) ⑥ 高額介護サービス費 各1点 6 5
問53 227,824(円)  8点(部分点なし) 8 2
第2問
問54 ① 10.81(%) ② 5.86(%) ③ 120.41(倍) ④ 93.23(%) 各2点 8 8
問55 ① 1.16  ② 12.17(%) ①2点②4点 6 6
問56 ① 30(万円) ② 5,000(株) ③現引き ④ 6(カ月) ⑤ 品貸料  ⑥ 増担保(規制) 各1点 6 3
第3問
問57 ① 盗難 ② 3(年間) ③ 15(歳) ④ 6(カ月) 各1点 4 3
問58 ① 6,800,000(円) ② 13,030,000(円) ①3点②5点 8 8
問59 ① 14,080,000(円) ② 1,812,000(円) ③ 480,000(円) ④ 1,922,400(円) ⑤ 38,220(円) ⑥ 1,743,800(円) ①③④⑤各1点②⑥各2点 8 8
第4問
問60 ① 2(m) ② 4(m) ③2(年)④ 位置指定(道路) ⑤ 1.4(%)  ⑥ 6(分の1) 各1点 6 4
問61 ① 723,200(円) ② 5,854,500(円) 各4点 8 8
問62 ① 248(㎡) ② 620(㎡) 各3点 6 6
第5問
問63 4,369(円) 5点 5 5
問64 ① 7,260(円) ② 5,091(円) ①3点②5点 8 8
問65 ① 3月15日 ②10(日) ③131(万円) ④ 9 ⑤ 7(年)  ⑥ 100(万円) ③2点①②④⑤⑥各1点 7 2

※公式では非公表のため、予想となります。計算過程がある問題においては部分点が付与される可能性もあります。

各大問の講評

各問の目標得点は配点予想を基に設定しています。なお目標得点は、FPキャンプの問題集と過去問演習をやりこんだ受検生が得点できる最大点数としています。

第1問(年金・社会保険)
(問51-53)における目標得点:20点中11点

≪問51≫
問51は健康保険について、FP試験では問われたことのない論点が出題されました。②③の入院時生活療養費や、④の保険外診療については、受検生のほとんどが聞いたこともないと思ったでしょう。①⑤⑥は、FPキャンプの講座内で解説があるので、FPキャンプ生であれば得点したいところです。

目標得点:6点中3点

≪問52≫
①~④は介護保険の王道的な問題となります。年金・社会保険分野の穴埋めは難しい問題が出題されやすい傾向にあるので、王道的な問題では失点しないようにしましょう。

目標得点:6点中5点

≪問53≫
2018年1月試験ぶりに、65歳以上の者の遺族厚生年金について出題されました。受検生によっては、過去問を解いたことがないという方もいたのではないでしょうか。初見の方でも調整前の遺族厚生年金の計算まではできていて欲しいところです。部分点が入ると仮定して、目標得点を2点としていますが、場合によっては、部分点が全く加点されない可能性もあります。

目標得点:8点中2点

第2問(金融資産運用)
(問54-56)における目標得点:20点中17点

≪問54≫
問54は、オーソドックスな財務分析の問題です。

①~③は、C分野でも最頻出である、ROE、サスティナブル成長率、インタレスト・カバレッジ・レシオの値を求める問題です。FPキャンプ生であれば、必ず得点して欲しい問題です。

④は負債比率の計算問題です。出現頻度はあまり高くはありませんが、「負債÷自己資本×100」という計算式を覚えているだけで得点できる問題です。問54は、ミスする要素の少ない問題であったため、満点を狙うことができたのではないでしょうか。

目標得点:6点中6点

≪問55≫
①投資信託の評価指標からシャープレシオが出題されました。シャープレシオの計算は2級試験でも出題されているため、間違えてはいけない問題といえます。

②ポートフォリオの標準偏差を求める問題です。計算式を覚えていても、計算過程で計算ミスや、最後にルートの計算を忘れてしまう可能性もあります。細心の注意を払って、ミスを無くしましょう。

目標得点:6点中6点

≪問56≫
②では、信用取引の委託保証金についての計算問題が出題されました。この問題は基礎編で既出だったため、基礎編の一問一答問題集を繰り返し解いていたFPキャンプ生であれば、迷うことなく正解を導くことができたと思います。

③の現引きや⑤の品貸料は、穴埋め問題として出題されると、答えにくい問題だったと思います。日頃から細かな語句を意識していても、試験で聞かれると用語が出てこなくなり、失点してしまった方もいるのではないでしょうか。

目標得点:6点中3点

第3問(タックスプランニング)
(問57-59)における目標得点:20点中19点

≪問57≫
①②は雑損控除の問題です。FPキャンプが制作協力した対策模擬試験において、詳しく解説をしている論点ですので、模試の解説をみた受検生であれば、難なく解答できたでしょう。

③④は青色事業専従者控除の適用要件について出題されました。過去試験の計算問題でも出題されている論点なので、対策はできていたと思いますが、③で誤って年齢を1歳ずらして解答してしまう可能性もあるので、年齢の解答には注意が必要です。

目標得点:4点中3点

≪問58≫
各種所得の計算問題です。

①の退職所得の計算はチャンス問題です。FP2級試験でも出題されることのある論点なので、正解できるように準備できていたはずです。

②の事業所得は標準的な難易度の問題です。ただ、ここで計算ミスしてしまうと、問59で総崩れしてしまいます。「10万円未満の減価償却資産」や「棚卸資産の評価方法」など、ミスを誘発する箇所が多くありますが、しっかりと過去問対策をしていれば間違えることはなかったでしょう。

目標得点:5点中5点

≪問59≫
問59は所得税額の申告納税額を算出する問題です。計算自体は難しいものではないので、この形式で出題された際は、「計算ミスをしない」ことに注意してください。1つの計算ミスで、8点失点してしまう可能性もある問題です。試験中に時間に余裕があれば、2回解いてみてもよかったでしょう。

目標得点:8点中8点

第4問(不動産)
(問60-62)における目標得点:20点中18点

≪問60≫
①②は道路についての問題です。頻出の数字が問われているので解答しやすかったかと思います。③の計画道路や④の位置指定道路についても、基礎編では出題されたことのある論点なので、得点できていて欲しいところです。

⑤⑥は固定資産税の王道的な問題な問題です。3級試験で出題されることもある論点なので、絶対に失点してはいけない問題でした。

目標得点:6点中4点

≪問61≫
「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」と「3,000万円の特別控除」の組合せは不動産の譲渡の特例のなかでも最頻出の問題であり、3回連続の出題です。不動産譲渡の税金の計算過程が身についている受検生にとっては得点源となる問題でした。

目標得点:6点中6点

≪問62≫
建蔽率と容積率の問題はほぼ毎回出題されています。

①建蔽率について、設例では指定建蔽率80%の防火地域に耐火建築物という条件が与えられています。この場合の建蔽率は、角地かどうかにかかわらず100%となります。このパターンの計算は2回連続での出題なので、直近試験を見直すことができていれば、解答できたでしょう。

②の容積率については、通常通り前面道路の幅員と指定容積率を比較するだけで良いため、難なく解答を導くことができた問題といえます。

目標得点:7点中7点

第5問(相続・事業承継)
(問63-65)における目標得点:20点中15点

≪問63≫
類似業種比準方式について、業種目を加味した問題です。初見で出題されると難しいですか、規模区分も指定されており、類似業種比準方式の計算を2回行うだけで良いため、ケアレスミスが起こりにくい問題です。

目標得点:5点中5点

≪問64≫
純資産価額方式と併用方式からの出題です。この問題もひっかけるような要素もなく、過去問通り素直に計算をすれば、確実に得点できた問題です。

目標得点:8点中8点

≪問65≫
①~④は贈与税の配偶者控除の問題です。③の計算問題は、贈与税額まで解答させる形式です。過去問では贈与税の課税価格まで出題されることは多かったですが、税額まで問われたことはありません。店舗部分の贈与税額を計算し忘れてしまった方もいたのではないでしょうか。

⑤⑥は生前贈与加算の法改正についての出題です。生前贈与加算の期間が3年から7年になったこと、延長した4年分について100万円の控除が認められていることが知識として必要となります。過去問を解いていただけでは、対応はできなかったでしょう。

目標得点:7点中2点

応用編の振り返りと攻略に向けて
今回の応用編において、過去問をベースとした学習を重ねた場合に獲得可能な得点は79点でした。試験後ライブの反応を見ていても、80点台を取ることは十分可能であったといえます。

近年では応用編の難化がみられますが、今回試験は計算問題で理不尽な初見問題が出題されることもなく、比較的易しい難易度であったといえます。穴埋め問題も、難しいものはいくつか見られましたが、FPキャンプの教材をしっかりと暗記していれば、6割はカバーすることができます。

近年の難化する1級学科試験においては、基礎編も応用編も安定して得点できるようになることが重要となります。基礎編を学ぶ時には応用編を視野に入れながら、穴埋めでも答えられるように丁寧に理解を深めていきましょう。計算問題は、ただ計算過程を覚えるのではなく、計算の全体像を俯瞰してみてください。そうすることで、初見の問題や応用力が問われる問題への対応力が増します。

今回の試験は、基礎編・応用編ともに、過去問の演習量や精度が、そのまま得点に反映されるものだったと思います。 妥協することなく、勉強を続けていた受検生であれば合格点に到達できたのではないでしょうか。

【1級基礎編の講評はこちら】 

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この記事を監修した人 

僧侶FPとやま

1級ファイナンシャル・プランニング技能士/宅地建物取引士
FPキャンプ1級コースの基礎編対策の問題集や解説、一問一答のメルマガを担当。本業である僧侶としての深い見識から、わかりやすくタメになる情報を発信