2024年9月FP1級学科試験 基礎編講評
2024年09月12日FPキャンプ講師のとやまです。
9月8日に実施されたFP1級学科試験を受験された皆様、大変お疲れ様でした。
本記事では、9月試験 基礎編の総評と各分野の講評、ならびに全体の振り返りと攻略についてお伝えします。
基礎編総評
過去2回の試験と比較して基礎編全体を振り返ると、解答しやすい問題が多くあったという印象を受けました。受検生が知らないような論点や失点させることを意図したかのような出題があまりなかったため、焦ることなく問題を解くことができたのではないでしょうか。
もちろん、FP1級試験の選択肢の中には初見の問題も出題されます。こうした問題に迷わされることなく、自信をもって解答できる選択肢を選ぶことができるかが重要となった試験でした。FPキャンプの一問一答問題集や模試をやりこんだ受検生にとっては、得点を稼ぎやすい試験であったと言えるでしょう。
各分野の講評
A分野(年金・社会保険)
難易度:普通
(問1-8)における目標得点:16点中10点
得点源にしたい問題:問1・4・6・7
基礎編の出題傾向として、A分野が最難関であり、初見の問題も多く出題されています。A分野では得点源となる問題がほとんどない過去試験もありました。しかし、今回の問1・4・6・7は、FPキャンプの一問一答問題集をしっかり学習していれば、解答できた問題です。4択全ての正誤の判定は難しいですが、正解択は過去に出題されているため、基礎編の演習量が多い受検生にとっては、自信をもって解答できたのではないでしょうか。
一方で、正解を導き出すことが極めて困難な問題も出題されています。問5の繰上げ支給の計算問題は、応用編でも出題されたことのない形式の問題です。特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢を暗記し、経過的加算額について深く理解している必要がありました。問8の「中小企業の資金調達」の問題は、選択肢の全てが初見問題であり、得点は難しいでしょう。試験でこうした論点が出題された場合は、時間をできる限り費やさないようにする必要があります。
今回のA分野の攻略のカギは、過去に出題された問題を見つけ出し、自信を持って解答することができるかです。そのための決断力は、一問一答の演習によって養うことができます。日頃の一問一答の演習の精度が、得点に反映されたのではないでしょうか。
B分野(リスク管理)
難易度:易
(問9-15)における目標得点:14点中12点
得点源にしたい問題:問9~14
B分野はFP試験の全6分野の中で、難易度が最も易しくなる傾向があります。問9〜14は、4択の選択肢全てがFPキャンプの一問一答問題集でカバーされていました。問12の生命保険の経理処理の問題も、資産計上の割合をしっかりと暗記していれば、複雑な計算を行わなくとも得点できる問題です。
B分野を得点源にするためには、制度ごとの知識の違いを明確化させることが重要です。問11の「生命保険契約の各種手続き」は似たような制度であるため、過去問を機械的に覚えているだけでは、本番試験において失点してしまうこともあるでしょう。制度ごとの共通点と相違点を明確化させて覚えていると、こうしたミスを減らすことができ、B分野を得点源とすることができます。
C分野(金融資産運用)
難易度:やや易
(問16-24)における目標得点:18点中12点
得点源にしたい問題:問16・19~23
C分野の問題は比較的易しかったといえるでしょう。特に問20・21の計算問題は、FP1級の王道的な計算問題です。基礎編においてC分野が最も計算問題の出題回数が多い分野です。これらのチャンス問題を失点しないことが合格するために必要となります。
今回のC分野は、分野を跨いでの知識も必要となる印象を受けました。問17の「金地金の譲渡」や問23の「外貨預金の利子」ではD分野の知識があれば得点できます。巧妙な問われ方をした問題ですが、他分野の考え方から発想を想起させる応用力があれば、目標得点まで得点を伸ばすこともできたでしょう。
D分野(タックスプランニング)
難易度:難
(問25-33)における目標得点:18点中6点
得点源にしたい問題:問25・30
今回の試験において、最も難しい分野だったと言えます。問26~28は、選択肢を絞ることはできますが、自信を持って解答を導き出せるものが少なかったのではないでしょうか。ただ、問27の「雑損控除」はFPキャンプが制作協力した対策模擬試験で出題を的中させている問題です。模試を通して試験対策をしていた受検生は正解できたと思います。
問29は改正された「賃上げ促進税制」について出題されました。くるみん認定やえるぼし認定などのかなり細かい論点について問われています。改正論点を追っていた受検生でも、失点してしまう可能性があると思います。
今回のような難易度の出題がされたときは、いかに選択肢を絞ることができるかが重要になってきます。今回の問題はどれも難しいですが、選択肢を絞り込むことができるものは多くあります。諦めることなく、得点の期待値をあげることができたかが、差がつくポイントとなりました。
E分野(不動産)
難易度:普通
(問34-41)における目標得点:16点中10点
得点源にしたい問題:問36・37・40・41
今回のE分野の問題は、問40・41において計算問題が出題されました。E分野から計算問題が2問出題されることは珍しいですが、難易度は易しいものでした。問40は、過去では応用編にみられる出題形式です。今回試験では、過去の応用編の問題が基礎編の形式で出題される傾向にありました。また、問41は、「DSCRとNOI利回り」の計算問題です。NOI利回りの計算は、1級での出題は少ないですが、3級や2級で出題される内容であり、完全講義Premiumでも解説しているため、FPキャンプ生であれば得点して欲しいところです。
問38の「印紙税」の問題は宅建試験の論点です。E分野では、宅建試験の論点を問うことが多くありますが、FP技能士がこれらの知識を覚えている必要性は感じられません。解答できなくても問題ないでしょう。
全体でみると、標準的なFP1級学科試験の難易度でした。初見で手も足も出ないような問題は問38のみであり、残りの問題は過去問やテキストでも対応できます。時間をかけて、冷静に読み解くことができれば、6割得点することもできたでしょう。
F分野(相続・事業承継)
難易度:やや易
(問42-50)における目標得点:18点中12点
得点源にしたい問題:問42~46・48
問43は「相続時精算課税制度」の法改正について、細かな論点まで出題されていました。しかし、正解択は頻出の論点であったため得点して欲しいところです。今回試験の法改正問題の特徴として、FP1級試験における頻出の制度からの出題が多くあったという印象を受けます。
問48は「取引相場のない株式の評価」で、応用編の計算問題に出題されている内容が、基礎編の形式として出題されています。F分野では、過去試験においても、応用編の計算問題の論点が基礎編に出題されることが多くあります。日頃の学習において、計算問題をただ解くだけでなく、計算の過程を言語化できるように鍛えていれば、これらの問題で失点するリスクを減らすことができます。
F分野では、複雑な制度や似たような論点が多く出題されます。これらの制度を自分の言葉で言語化できるかが、F分野で得点するうえで重要となります。過去問を解きながら、常に制度の背景や目的を意識してみるとF分野の得点は伸びていくでしょう。
基礎編の振り返りと攻略に向けて
今回の基礎編において、FPキャンプの一問一答問題集をベースとして学習を重ねた受検生であれば、62点は得点できたのではないでしょうか。直近の試験と比較しても、過去問からの出題率が高く、得点を伸ばしやすかった試験です。また正答を導くことができなくとも、選択肢を絞り込むことはできるため、期待値として70点台も十分に狙えた試験であったと思います。
FPキャンプの一問一答問題集と完全講義Premiumの視聴で、計算問題を除いた200択のうち、60%は適切か不適切かを判断することができました。FPキャンプで基礎編の土台ができている受検生であれば、約6割の問題は迷うことなく正誤を導き、残りの問題に時間を割きながら、ゆっくりと問題を読解できたといえるでしょう。
今回の試験は、過去問からの出題が多く、また応用的な発想力がなくとも得点できる問題が多かったと思います。試験日までに過去問をどれだけ解いたかが合否を分けるポイントとなりました。D分野のように難しい分野はありましたが、それ以外の分野で挽回することもできたでしょう。FPキャンプにおいて、毎日基礎編の問題を解く習慣ができていた受検生は、基礎編で手ごたえを感じて、余裕をもって午後の応用編を迎えることができたのではないでしょうか。
今回は基礎編・応用編ともに得点源とすることが可能でした。しかし、試験によっては応用編で得点が見込めないようなものも出題されます。応用編が難しい試験では、基礎編でミスなく得点を積み重ねることが重要となります。過去問をしっかりと理解できていれば、どんなに難しい試験でも基礎編6割は得点可能です。まずは基礎編で合格するための基盤を築くことがFP1級試験突破に重要となります。
【1級応用編の講評はこちら】
この記事を監修した人
僧侶FPとやま
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/宅地建物取引士
FPキャンプ1級コースの基礎編対策の問題集や解説、一問一答のメルマガを担当。本業である僧侶としての深い見識から、わかりやすくタメになる情報を発信